(1)カイコ培養細胞の培養条件に対する反応パスウェイに関わる遺伝子発現の網羅的解析 カイコBmN4細胞において培地の違いで発現量が2倍以上異なる383遺伝子を既知のパスウェイ上にマッピングする作業は、ホモログ不明の211遺伝子に関しては難航しており、今後の進展もカイコゲノムのアノテーションの充実速度に依存すると判断された。また、新規農薬ピリダリルが毒性を示さないBmN4細胞での標的分子あるいは関与する反応パスウェイの同定は困難であった。 (2)各種カイコ培養細胞株に特有な代謝パスウェイに関わる遺伝子発現の網羅的解析 カイコ体液によるKel細胞のバキュロウイルスBmNPV感受性増進におけるカイコ体液中のpromoting protein(PP)の効果を、特異抗体を用いてアフィニティー精製したPPを培地に添加して厳密に評価した結果、体液の約70%の促進効果を示すことが明らかとなった。したがって、残り30%に対応する別の感染促進物質が体液中に含まれていると判断された。 (3)遺伝子発現ネットワークの検出及び検証に必要なアッセイ系の構築 トランスポゼースmRNAの5'および3'UTRを改良することにより、piggyBacベクターによる形質転換カイコ培養細胞作製の効率をヘルパーDNAと同等なレベルまで向上させることに成功し、染色体に導入した遺伝子を安定かつ持続的に発現させるシステムが完成した。また、カイコアクチンA3プロモーターをhr5エンハンサーで増強した一過性発現ベクターの構築に成功し、人為的突然変異アセチルコリンエステラーゼ遺伝子およびカイコ2型濃核病ウイルス感受性遺伝子の生産とその機能検定に役立てるためのアッセイ系構築に着手した。
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