本研究では性フェロモンに対して非常に高い感度と特異性を有するカイコガのフェロモン受容系をモデルとして、フェロモン受容に関係するレセプタ等の生体分子群を人工のリン脂質二重膜内に再構成し、フェロモン等の刺激受容をリン脂質膜の膜電位変化として検出するデバイスの構築を目指している。 そのため、リン脂質膜形成のためのマイクロチャンバおよび信号検出用の半導体デバイスを試作し、それらを微小流体デバイス内に組み合わせてセンサのプロトタイプを製作し、基本特性を明らかにした。その結果、製作したデバイスは数pAの電流変化によって生じる膜電位変化を検出できることが明らかになった。さらにモデル膜タンパク質としてヘモリシンをリン脂質二重膜に導入し、ヘモリシンのイオンチャネル形成作用によって生じる膜電位変化計測を試みたところ、数mVの膜電位変化として検出することが出来た。計測回路等に改良の余地はあるものの、レセプタの作用によって生じる膜電位変化を検出するセンサデバイスのプロトタイプは完成したと考えられる。 またセンサの感度をさらに高める方法の1つとして、レセプタを培養細胞で大量に発現させて、それらをセンサデバイスへ導入することが考えられる。平成18年度にカイコガフェロモンレセプタ等の遺伝子のクローニングに成功し、19年度にはそれらを利用してレセプタに対する抗体を作成し、さらに発現ベクターに載せて昆虫細胞(BmNおよびSf9)に導入してレセプタを発現させた。20年度は抗体を用いてそれらが細胞膜で発現していることを確認した。
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