研究概要 |
これまで、申請者らは、培養液に硝酸を添加するとダイズの根粒生長と窒素固定活性が可逆的に阻害されることを報告してきた。 硝酸以外の窒素化合物であるアンモニア、尿素、グルタミンが、根粒生長と窒素固定活性(アセチレン還元活性)に及ぼす影響を水耕栽培ダイズで調べた。根粒菌を接種し、無窒素栽培したダイズに、硝酸または、アンモニア、尿素、グルタミンを窒素として1mMとなるように添加し、その後の根粒粒径変化とアセチレン還元活性を測定した。投与後、どの窒素添加区でも、根粒の生長阻害および窒素固定の抑制がみられたが,硝酸の阻害効果が最大であった。窒素化合物を5日間連続的に与えた後、無窒素培地で栽培を続けたところ,どの処理区でも、根粒の生長ならびに窒素固定活性がすみやかに回復した。これらの結果は、根粒生長と窒素固定活性の可逆的阻害効果は、硝酸以外の窒素化合物でも共通に見られることが明らかとなった。 次に、投与する硝酸または、アンモニア、尿素、グルタミンに15N標識化合物を用い、かつ13CO2を葉から供給し、窒素と炭素の根粒への動きを追跡した。短時間には、15Nの根粒への移行量は少なく、根粒生長と窒素固定活性の阻害との関連は見られなかった。一方、光合成により取り込まれた13Cの根粒への取り込みは、根粒生長と窒素固定活性の阻害と強く関係し、阻害を強く受けた区ほど、13Cの根粒への移行量が少なかった。この結果は、培養液に供給した窒素またはその代謝産物が、根粒の生長と窒素固定活性を阻害しているのではなく、窒素を与えることにより、光合成産物の根粒への輸送が低下することが原因であることが明らかとなった。 アミノ酸分析によると、根粒中のアミノ酸は、硝酸投与で増加し,特にアスパラギン酸が増加した。根では、アンモニア投与でアミノ酸が増加したが、硝酸投与では増加しなかった。
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