研究概要 |
土壌系における糸状菌脱窒活性とCYP55遺伝子発現をモニタリジグする方法を確立するため,まずは土壌から分離した脱窒糸状菌を用いて,培養系での脱窒活性とCYP55遺伝子発現のモニタリングをおこなうことを目的とした。ダイズ根粒根圏土壌から分離された脱窒糸状菌Fusarium sp.Root-5株の培養菌体からtotal RNAを抽出し,逆転写-PCRによりCYP55の転写を確認した。次に脱窒活性が高発現となる培地を検討したところ,炭素源としてグリセロール,窒素源として硝酸を用い,さらにNH_4Clを添加した培地で最もN_2O生成量が増大した。最後に,脱窒活性が高発現となる培地を用いてECD-GCで脱窒活性を経時的に測定し,それに伴うCYP55発現のReal-Time PCRを用いた定量解析を試みた。その結果,脱窒活性が増加してもCYP55発現量は一定であり,CYP55発現量はN_2O生成量と相関関係が無いことが示唆された。 また,糸状菌の脱窒に対する寄与,土壌中での脱窒性糸状菌の動態を明らかにすることを目的とした。供試土壌は過剰な窒素肥料を施肥した茶園土壌,ダイズと水稲を輪換栽培している土壌,牛糞堆肥と化成肥料を連用したキャベツ畑土壌を用いた。まず,微生物の脱窒に影響を及ぼす土壌環境要因を調査するために土壌の理化学性試験を行い,次に,希釈平板法,土壌洗浄法にて各土壌から10菌株ずつ糸状菌を分離した。その後,単離した菌株のN_2O発生能と供試土壌からのN_2O発生量を測定した。そして,N_2O発生に起因している糸状菌の群集構造解析を従来の18SrRNA遺伝子だけでなく28SrRNA遺伝子までの領域(IGS領域)を標的としたRibosomal intergenic spacer analysis(RISA)を用いて解析した。本研究によりN_2O発生に糸状菌が大きく関与すること,また供試土壌には脱窒糸状菌として報告のあるFusarium属やHypocrea属の糸状菌が存在することが分かった。
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