当該年度は茶園土壌からの亜酸化窒素発生が細菌と真菌のどちらの代謝に由来するのかを基質誘導呼吸阻害法を用いて調査した。まず、使用する抗生物質に対する耐性菌の計数・分離・同定・脱窒活性調査をおこない、基質誘導呼吸阻害法に影響する耐性菌が存在しないことを確認した。また硝酸濃度・炭素源濃度・抗生物質の溶媒の種類・測定時間などの最適条件を検討した。 本調査の結果、供試した茶園土壌において亜酸化窒素の発生は土壌の炭素源の種類によって細菌と脱窒の寄与率が変化することが判明した。供試土壌の全炭素含有率は高いが、易分解性の有機物炭素が低いため、炭素源無添加の場合、亜酸化窒素の発生そのものは低いものの真菌による発生が全体の約66%を占めた。一方、易分解性の炭素源であるグルコースを添加し微生物を活性化した場合、亜酸化窒素の発生も高まり、細菌による脱窒が約60%を占めた。また、アセチレン阻害の有無で亜酸化窒素発生を比較したところ、細菌による亜酸化窒素還元活性(Nos活性)は非常に低く、本茶園土壌の脱窒細菌は窒素までの完全脱窒をほんとんど行っていないことが示唆された。一方、糸状菌脱窒においてはアセチレン阻害により有意な亜酸化窒素発生の増加がみられたことから、糸状菌がNos活性を持っている可能性が考えられた。これまで、糸状菌の脱窒はP450norによる亜酸化窒素の発生までであり、アセチレンにより活性阻害を受ける細菌型のNosは持たないとされてきた。もし、糸状菌が細菌型のNos活性を持っているとすれば、これまでに報告のない新しい知見となる。
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