研究概要 |
本研究では、環境汚染が深刻な代表的な有機塩素系殺虫剤に焦点をあて、(i)難培養性微生物の遺伝情報も含む未開拓な遺伝子資源から新規の分解酵素遺伝子の取得、(ii)有機塩素系環境汚染物質分解の鍵酵素である脱ハロゲン酵素の機能改良、(iii)直接の分解酵素以外で分解活性の発現に必須な細胞因子の同定、(iv)有効な有機塩素系化合物の生分解システムの構築、を実施し、環境細菌が有する高度難分解性有機塩素系化合物の分解能力を正確に把握し、これを総合的に開発することで環境浄化へ結びつけることを目的とする。本年度の主な成果は以下の通りである。 1) 基質および産物の出入りの過程に注目することで、ハロアルカンデハロゲナーゼDhaAの1, 2, 3-trichloropropaneに対する分解活性を強化できることを明らかにした。 2) 根粒菌由来のLinBホモログであるDbeAの結晶化に成功した。 3) 環境汚染物質分解に関わるプラスミドNAH7上のtraDオペロンが接合伝達の宿主特異性の決定に関与する因子であることを明らかにした。 4) 環境細菌の環境適応にグローバルレギュレーターFurが重要な役割を果たしていることを明らかにした。 5) 有機塩素系殺虫剤HCH汚染土壌より単離した細菌MI1205株が保持するLinB-MIが、UT26株由来のLinB-UTと7アミノ酸残基のみの違いにも関わらず顕著な活性特性の違いを示す原因について、立体構造の観点から解析を行った。 6) 有機塩素系殺虫剤gamma-HCH分解の鍵酵素であるLinAの結晶構造解析に成功した。 7) DNA配列比較ソフトウェアGenomeMatcherを開発した。
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