研究課題/領域番号 |
18380058
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山本 憲二 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (70109049)
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研究分担者 |
芦田 久 京都大学, 生命科学研究科, 助手 (40379087)
片山 高嶺 石川県立大学, 生物資源工学研究所, 講師 (70346104)
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キーワード | エンドグリコシダーゼ / 糖転移活性 / グリコシレーション / Endo-M / エンド-β-N-アセチルグリコサミ二ダーゼ / エンド-α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ / ムチン |
研究概要 |
本研究は微生物のエンドグリコシダーゼの糖転移活性を活用して、さまざまな生理活性複合糖質の合成を行うとともに、その技術の確立を目指した酵素的解析を行うことを目的としている。平成18年度における研究実績は次の通りである。1.組換え型エンドグリコシダーゼの大腸菌による大量発現:糸状菌Mucor hiemalisのエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(Endo-M)は酵母Candida boidiniiにその遺伝子を導入して発現する系が既に構築されているが、本研究においては遺伝子操作が容易な大腸菌での発現系の確立を試みた。Endo-Mの遺伝子をpET23ベクターに繋ぎ、大腸菌BL21に導入して、IPTGによる発現誘導を行うことなく、20℃にて長時間培養することにより可溶性タンパク質として多量に発現させることに成功した。これをHis-Tag融合型の酵素として大腸菌で容易に大量生産できる系を確立した。2.部位特異的変異により糖転移活性を増進させた変異酵素の取得:Endo-Mの糖転移活性の増進を意図して、活性中心付近の構成アミノ酸の置換を試みた。その結果、保存性の高いアミノ酸であるN-末端より217番目のアミノ酸のチロシン残基をフェニールアラニンに置換した変異酵素を作成したところ、高い糖転移活性を有することを見出した。3.エンド-α-N-アセチルガラクトサミニダーゼの糖転移活性によるムチン型糖鎖のペプチドヘの付加:ビフィズス菌の本酵素の遺伝子を大腸菌に導入して得られた組換え型酵素を用い、ガラクトシルβ1-3N-アセチルガラクトサミン(Galβ1-3GalNAc)α1-pNPをムチン型糖鎖の供与体として、糖転移活性を検討した結果、糖やアルコールばかりでなく、セリンやスレオニンのような水酸基を持つアミノ酸、更にムチンの部分ペプチドのMUClaにもムチン糖鎖を転移付加することを見出した。この結果は人工ムチンの合成の可能性を示唆するものである。4.組換え型Endo-α-GalNAc-aseの基質特異性の検討:さまざまなpNP-α-二糖を基質にして加水分解反応により、本酵素の基質特異性を調べた。その結果、Galβ1-3GalNAcのみならず、Glcβ1-3GalNAc、 GalNAcβ1-3GalNAcに対しても作用することを確認した。この結果より、さまざまな構造の0-結合型糖鎖が糖転移活性の供与体として活用できることが示唆され、さまざまな0-結合型糖鎖を持つ機能性糖鎖複合体を化学-酵素合成できることが示唆された。
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