■エタノール酸化系およびその他の呼吸鎖エネルギー生成系の解析:酢酸菌の酢酸発酵は、エタノール酸化期、酢酸耐性期、酢酸過酸化期の3段階で起る。その生育期によって、エネルギー生成能および酢酸耐性能は変化することが予想される。そこで、各生育期における呼吸鎖とエネルギー生成能について検討した。まづ、呼吸鎖末端オキシダーゼを低温スペクトルで解析し、エタノール酸化期にCytochrome ba_3ユビキノール・オキシダーゼが高濃度生成し、耐性期および過酸化期ではそれが著しく低下して別の未同定のシアン耐性オキシダーゼが増加することがわかった。また、膜小胞を作製し、種々の基質によるエネルギー生成能を検討した結果、エタノール、グルコース、乳酸に加え、NADHによってもエネルギー生成が起ることが示された。これらの内、乳酸とNADHは輸送系によって細胞内に取り込まれてから呼吸鎖と反応しエネルギー生成していると考えられた。■酢酸排出系の機能解析:エタノール酸化期での菌体を用いた酢酸の取り込みの解析が行われたが、菌膜をもつR株はそれを欠失したS株に比べ、酢酸の流入が著しく低下しているがわかった。また、各期間に細胞膜で特異的に発現するタンパク質のプロテオーム解析を行い、酸化期に特異的に発現する1つの膜タンパク質を明らかにした。■酢酸排出系と酢酸取り込み系の切り替えに関与するシグナル解析:酢酸菌のホモセリンラクトン(AHL)の生成をAgrobacteriumを用いたバイオアッセイ法で解析した。その結果、本菌はC6-AHLとC8-AHLを生成することが明らかになった。そこで、酢酸生成、酢酸耐性および過酸化各期の培養培地に、どのホモセリンラクトンが、どの濃度蓄積しているのかを検討した結果、酢酸生成期にC6-AHLが、酢酸耐性および過酸化各期には主にC8-AHLが増加することが示された。
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