(1)アミノ酸アミドのダイミックな光学分割:アミノ酸アミドラセマーゼとOchrobactrumanthropiC1-38由来のD-アミノペプチダーゼ(DAP)やD-アミノ酸アミダーゼ(DAA)との組み合わせによる光学活性なD-アミノ酸の合成について検討した。大腸菌で発現したα-アミノ-ε-カプロラクタム(ACL)ラセマーゼおよびDAP等を組み合わせてL-アミノ酸アミドからのD-アミノ酸の合成に用いた。その結果、各種のアミノ酸アミドよりダイナミックな加水分解反応を行い、定量的にD-アミノ酸を得た。本反応における至適温度、至適pHなどについて検討した。アミノ酸に対するラセミ化活性を示さないことを確認した。(2)DAAの構造解析とACLラセマーゼの進化分子工学:本酵素をさらに進化させるために、酵素活性の呈色評価法を確立した。D-またはL-アミノ酪酸アミドを基質とし、立体選択的アミノ酸アミダーゼおよびアミノ酸オキシダーゼ、4-アミノアンチピリンを用いる呈色法が可能であった。また、名古屋大・工の山根隆教授と共に、Ochrobactrum anthropi SV3由来のDAAを2.1Aの解像度で構造解析した。DAAの単量体は、363アミノ酸からなり、DAPのドメインAの構造と類似していた。DAAが属するペニシリン認識酵素群(PRPs)が有する典型的な3つのモチーフの内、3番目のモチーフ(His307-Leu308-Gly309)のLeu308は、Phe282と疎水性相互作用を形成し基質のN末端残基が求核基Ser60に近づくのを遮断していた点で、他のPRPsと比べ独特であった。
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