研究概要 |
エリシター処理をしたジャガイモ塊茎組織において、7つのフェニルプロパノイド生合成反応のフラックスを測定したデータをもとにして、モデル化し、全ての生合成反応を含むフラックスコントロール係数を推定することに成功した。シロイヌナズナではヒドロキシ桂皮酸とアグマチンのアミドの蓄積がAlternaria barassicicolaの感染によって誘導される現象を見いだしていたが,本年度は,その生合成制御に関する実験を行った.まず,想定される前駆物質の標識化合物を用いて,その取り込みを調べた.その結果,フェニルアラニンやp-クマル酸が効率よくアミド化合物に取り込まれた.次に,この結果に基づいて想定される経路上に位置する酵素活性を測定した.フェニルアラニンアンモニアリアーゼや4-クマル酸:CoAリガーゼ,アグマチンデカルボキシラーゼなどの酵素活性は感染によって変化しないのに対し,生合成の最終段階を触媒するアグマチンクマロイルトランスフェラーゼ(ACT)活性は顕著に増大した.したがって,アミド化合物の蓄積の誘導にはACTが決定的な役割を果たしていることがわかった.この酵素はオオムギに存在することが報告されているが,シロイヌナズナではこれまでに同定されていない.この酵素を同定するために,オオムギのACTと類似性の高い遺伝子約50個から,感染によって発現が増加するものを4つ選び出した.さらにこれらの遺伝子を欠損する突然変異体にA. barassicicolaを接種してアミド化合物の分析を行い,そのうちの一つ(ACT37)がアミド合成をできないことを発見した.この結果はACT37がシロイヌナズナのアグマチンクマロイルトランスフェラーゼであることを明瞭に示すものである.
|