研究概要 |
モデル植物,シロイヌナズナを対象として,ジベレリン受容体3種(AtGID1a,1b,1c)の各翻訳産物を調製し,いずれもが活性型ジベレリン特異的な互いに似た結合様式を不すことを明らかにした。また,多重の機能欠失型変異を導入した植物体の解析から,AtGID1a,AtGID1cに関する2重変異体のみ,他の組み合わせによる2重変異体あるいは,各1遺伝子の機能欠失型変異体では認められない矮性の形質が現れることが明らかとなった。3種のGID1遺伝子の花茎における発現状況には極端に大きな差異が認められなかったことから,AtGID1a,AtGID1c2重変異体でのみ形質が現れる点について,(a)より微細なレベルで比較した場合には他の2種と異なる遺伝子発現パターンをAtGID1bが呈する可能性,(b)AtGID1bが花茎において潜在的に機能が低い可能性が考えられた。そこで酵母を用いて,ジベレリンのシグナルを負に調節するDELLA因子との相互作用状況,あるいは,DELLA因子の分解に関わるF-Boxタンパク質SLY1との相互作用状況に組み合わせいかんで差が認められるか調べた結果,組み合わせの如何に依らず(i)GA依存的にGID1-DELLA間の相互作用が生じること。(ii)SLY1の存在によりGID1-DELLAで形成されていた相互作用が消失することを確認した。従って,酵母を用いた実験系からは上記(b)の可能性を示唆する結果は得られなかった。しかしながら,AtGID1a,AtGID1c2重変異体においてAtGID1b遺伝子を過剰発現させた場合,ある程度までの背丈の回復が認められたものの,野生型植物体と同程度の丈までの回復は望めないことから機能面でAtGID1bが機能しづらい何らかの仕組みが存在することが強く示唆された。
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