本研究では、シクロアルカン系有機溶媒相溶二相化現象を応用し、多様なオリゴ糖‐ペプチド複合体標品のワンポット逐次多段階化学合成法を確立する新たな突破口を切り開くことを目的とした。 相溶二相系で糖ペプチドを合成する場合、コアユニットに糖鎖またはアミノ酸が逐次結合した各段階の生成物が反応液を二相に分離した状態で、シクロアルカン相に分配される必要がある。そのために糖質部分に疎水性保護基を有し、糖鎖に結合したアミノ酸のN末端、C末端にそれぞれペプチド鎖を伸長可能なコアユニットを構築した。 その結果、合成反応は均一溶液中で実施し、反応終了後にはコアユニットを含む目的とする生成物をシクロアルカン相に回収することができる、簡便な操作性を基軸とする合成システムを確立した。すなわちコアユニットは相分離状態で上相に回収可能とし、糖鎖またはペプチド鎖伸長試薬は下相に回収することができた。目的とする分子間反応は均一化状態、または二相分離状態で実施し、コアユニット溶液は常に同一容器 (ワンポット) に保持することができた。 本反応系は疎水性保護基が結合した生成物がシクロヘキサン相に均一に可溶化するため、固相法では困難であった担体結合分子間の反応や、固体触媒などを用いた反応へ応用することが可能である。従って保護基の切断、側鎖の伸長などに一般化学合成と同じ試薬、触媒を使用することができると期待される。また、糖ペプチドの合成反応のモニターや分離精製においても、均一に溶解した単一分子を取り扱うため、分離、精製、純度検定等が飛躍的に簡便に行えると期待される。
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