研究概要 |
年々増加傾向にある脂肪肝のうち、慢性脂肪肝は、主にアルコール多飲と肥満によるものであり、そのため糖尿病や高脂血症、動脈硬化など生活習慣病を合併する危険性があり、健康上、注意が喚起されている。本研究では、日常規則的かつ容易に摂取可能な食事の形態として、非メチレン介在型脂肪酸を含む油脂を食することにより、脂肪肝を予防することを実験動物と培養細胞を用いて証明することを行った。まず非メチレン介在型脂肪酸であるシアドン酸(c5,c11,c14-eicosatrienoic acid)とピノレン酸(c5,c9,c12-octadecatrienoic acid)を、尿素付加法と酵素エステル化法を併用することとで、かや油および松の実油からそれぞれ単離することに成功した。これら非メチレン介在型脂肪酸の抗脂肪肝作用を、培養肝細胞としてヒト由来の肝癌細胞を用いて評価した。次いで、シアドン酸を構成脂肪酸として10%含むかや油を食餌に添加して肥満モデルラットであるOLETFラットを飼育した結果、血清および肝臓の中性脂肪とコレステロールの上昇が抑えられた。そこで、かや油による脂質代謝改善の作用機構を明らかにするため、肝臓の脂質代謝関連酵素の活性とmRNA遺伝子の発現を測定した。その結果、脂肪酸合成系酵素活性の低下と脂肪酸酸化酵素活性の上昇が観察された。以上より、非メチレン介在型脂肪酸には脂質代謝を改善して脂肪肝を抑制する作用のあることが示唆され、健康機能性食品としてのかや油の利用が期待された。
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