研究課題
Loxリコンビナントホモマウス(Lox/Lox)とアルブミンプロモーターをもつcre recombinantマウスと交配して肝臓特異的なノックアウトマウスを作製し、ゲノム解析及びタンパク質レベルでER-60が欠損していることを確認した。ノックアウトマウスの出生率は野生型と同等であり外観・成長・体重・運動性なども野生型との差が認められなかった。従って、ノックアウトマウスを用いて肝臓関連の代謝や小胞体機能及びこれらの機能に対する食餌の影響とER-60との関係を解析することが可能となった。また、肝臓及び脳でのレプチン欠損マウスでのER-60の発現量の低下がレプチン情報伝達系に依存していることを、レプチン受容体欠損マウスを用いた解析、及びレプチン欠損マウスへのレプチン投与によるER-60発現量の回復により確認した。病的肥満ではレプチン抵抗性が生じることから、病的肥満による肝臓での小胞体ストレス応答の発生さらには小胞体ストレス応答に起因するインスリン抵抗性に小胞体分子シャペロンであるER-60の発現が関わる可能性が示唆された。ER-60は、アルツハイマー病において神経変性の原因とされるアミロイドβ (Aβ)が生成する神経細胞に高発現しており、強力なAβ線維化阻害活性及び線維化Aβの部分的な解離活性を有することを平成19年度に明らかにしたが、平成20年度には培養細胞を用いてER-60のノックダウンがAβの毒性に対して細胞を脆弱化させること、さらに、ER-60ノックダウン細胞へのはER-60の強制発現がAβ毒性への抵抗力を付与することを始めて明らかにした。本研究により作製に成功したノックアウトマウスと培養細胞を用いて得られた知見は、小胞体機能と食餌に起因する肝臓及び脳での代謝異常との関係解明への研究発展を可能にする成果であり、その科学的意義は大きい。
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J Agric Food Chem 57
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Proc Natl Acad Sci USA 104
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