研究課題
基盤研究(B)
頭髪の脱毛は今日の社会において多くの人が抱える深刻な問題である。その原因は、加齢によるもの、男性型脱毛、ストレスによる円型脱毛、抗がん剤による脱毛等、様々である。その予防、ないし改善は、単なる美容上の問題にとどまらず、生活の質(quality of life)に関わる重要な問題である。これまでに、我々はダイズタンパク質消化物から単離した免疫促進ペプチドsoymetide-4(Met-Ile-Thr-Leu)の経口投与により、抗がん剤によるラットの脱毛が阻止されることを見出してきた。また、同一ペプチドの経口投与または塗布により、剃毛マウスの育毛が促進されることを見出してきた。さらに、牛乳α-ラクトアルブミンから派生する免疫促進ペプチドGLF (Gly-Leu-Phe)も抗脱毛作用を示すことを見出した。本研究では、各種タンパク質の酵素消化物から、同様な作用を有するペプチドを探索するとともに、それらの作用機構を検討するための実験を行った。その結果、卵白アルブミンに含まれている、Gly-Leu-Trp(GLW)というペプチドが、α-ラクトアルブミン由来のGLFより強い作用を示すことを見出した。また、ヒトラクトフェリンのトリプシン消化物から回腸収縮および免疫促進ペプチドとして単離したlactomedin 1 (Cys-Phe-Gln-Trp-Gln-Arg)が抗脱毛作用を有することを見出した。さらに、円型脱毛症の原因物質といわれる内因性生理活性ペプチドsubstance PのC末端テトラペプチドに相当するPhe-Gly-Leu-Met-NH_2(substance P(8-11))、およびアンジオテンシンIIのC末端ペプチドに相当するIIe-His-Pro-Phe (angiotensin II (5-8))が抗脱毛作用を示すことを見出した。これらの低分子ペプチドによる抗脱毛作用は、いずれも、プロスタグランジン(PG)E2に対するレセプターサブタイプの一つであるEP_4に対するアンタゴニストによってブロックされることから、PGE_2-EP_4システムを介して作用することが明らかとなった。
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Lactoferrin 2009 Nipppon Igaku-Kan, Inc. (in press)
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