研究概要 |
腸内共生細菌による腸管免疫系の抗原特異的な免疫応答への作用を解明するため,卵白アルブミン(OVA)特異的なT細胞受容体を発現するトランスジェニックマウス(OVA23-3マウス)を用い,その無菌マウス由来免疫系細胞に対して,in vitroにおいて腸内細菌を感作させた.その結果,腸内細菌の刺激がOVA特異的なサイトカイン産生応答を直接調節し,その調節作用は細菌種により異なることを明らかにした.さらに,腸内細菌がin vivoにおいてOVA特異的免疫応答に与える影響について細胞・分子レベルでの解析を行った.すなわち,通常および無菌のOVA23-3マウスに,OVAを含む卵白含有飼料を1週間摂取させた後,それぞれのマウスの腸管免疫系の誘導組織であるパイエル板(PP)細胞の応答を検討した.通常マウスはOVAの摂取によりIFN-γ,IL-4,IL-6の産生が顕著に低下したが,無菌マウスでは,OVA摂取によるサイトカイン産生の低下があまりみられなかった.すなわち,無菌マウスのPP細胞は通常マウスに比べてOVA特異的なサイトカインを高産生した.PPT細胞のフェノタイプは,OVA摂取させた通常マウスのPP細胞中の活性化/メモリー型T細胞を表すCD4^+CD45RB^<low>細胞の割合が,無菌マウスのそれに比べて高かった.このとき,免疫応答を調節することが報告されている制御性T細胞マーカー(Foxp3,CTLA-4,GITR,CD25)の発現は,OVAを摂取させた通常マウスPP細胞のCD4^+CD45RB^<low>Foxp3^+,CD4^+CD45RB^<low>CTLA-4^+細胞の割合が,無菌マウスに比べて高かった. 以上,本研究によって腸内細菌にはパイエル板における制御性T細胞の生成または増殖を促進して経口摂取された抗原に対する免疫応答を抑制している役割があることが明らかになった.
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