研究概要 |
ニホンジカの採食によって他地域よりも高密度に刺毛をそなえる奈良公園のイラクサが,アカタテハ幼虫の成長にどのような影響を及ぼすかを室内飼育により調査した.その結果,奈良公園のアカタテハは奈良県高取町のイラクサよりも奈良公園のイラクサで高い成長量を示したのに対し,高取町のアカタテハは逆に高取町のイラクサで高い生長量を示した,このことは,奈良公園のアカタテハは奈良公園のイラクサに局所的に適応をしていることを示唆している. 前年度に引き続き「接触刺激による小型化>窒素濃度上昇>光合成活性向上」という連鎖反応の可能性を検討した。野外においてシカから保護された状況下で成長中のミヤコザサ当年稈に対し、定期的に接触刺激を与えたところ小型化することが確認された。しかし、小型化しても成長終了時の葉の光合成活性やクロロフィル含量については大きな変化はなく、可溶性タンパク質含量についてはむしろ減少することが明らかになった。前年度の結果と合わせて、継続的な接触刺激により短期間の間に小型化する場合、窒素濃度や光合成活性の向上は伴わない可能性が示唆された。 大台ケ原においてカイガラムシの分散時期におけるミヤコザサのフェノロジーを調査した結果、ミヤコザサの生長の終了時期は防鹿柵内よりも柵外で早いことが明らかとなった。また、2種のカイガラムシの分散時期は柵内よりも柵外で1週間早いことが推定された。したがって、ミヤコザサの生長時期に同調して、2種のカイガラムシの分散時期が早くなったことが考えられた。
|