研究分担者 |
池田 武文 京都府立大学, 農学研究科, 教授 (50183158)
山田 利博 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (30332571)
福田 健二 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (30208954)
松田 陽介 三重大学, 大学院・生物資源学研究科, 助教 (30324552)
坂上 大翼 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (90313080)
|
研究概要 |
ブナ科樹木萎凋病は,カシノナガキクイムシによって伝播される病原菌Raffaelea quercivoraによって発生する。カシノナガキクイムシの穿入は,18樹種で報告されている。その中で,野外で枯死が発生しているのはミズナラやコナラなど13種である。実験的にR. quercivoraに対する感受性の高低が明らかになっているのは,ミズナラなど8種である。本試験では,過去に接種試験が行なわれていないアカガシ,シラカシ,アベマキ,クリのR. quercivoraに対する感受性を明らかにすることを目的とした。その際,接種後に形成された非通水域の大きさを指標に,感受性が高いミズナラと感受性の低いアラカシと比較した。その結果,アベマキの非通水域はミズナラに次いで大きく,ミズナラとの間に有意な差がなかったことから,アベマキは感受性が高いと考えられた。また,シラカシの非通水域は,アラカシとほぼ同程度で有意な差がなかったことから,シラカシは感受性が低いと考えられた。 R. quercivoraは,菌株間で種内変異が存在する可能性が示唆されている。さらに,分離由来の異なるR. quercivora 4菌株を感受性の高いミズナラと低いアラカシの苗木に接種し,症状や非通水域の大きさを菌株間で比較した。各菌株の病原性は,ミズナラにおいて菌株間で枯死数や非通水域の大きさが有意に異なっていたことから,病原力が異なる可能性が示唆された。そこで本試験では,苗木で見られた病原菌に対する反応が成木においても得ることができるかどうかを検証することを目的とし,上記の接種試験と同じR. quercivora4菌株をミズナラとアラカシの成木に接種し,形成された材変色域の大きさを菌株間で比較した。その結果,ミズナラにおける菌株間での材変色域の大きさが有意に異なっていたが,苗木の試験で病原力が強いと判断された菌株と成木の試験で病原力が強いと判断された菌株が異なっていた。したがって,R. quercivoraは苗木と成木に対する病原力が異なっている可能性が示唆された。
|