研究課題/領域番号 |
18380096
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
林学・森林工学
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
石橋 靖幸 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (80353580)
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研究分担者 |
齊藤 隆 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (00183814)
紺野 康夫 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (00111196)
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研究期間 (年度) |
2006 – 2007
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キーワード | 遺伝的多様性 / 孤立 / 生息環境 / 分子生態 / 分断 / 分布 / 小型哺乳類 / 遺伝的交流 |
研究概要 |
生息環境の分断・孤立化の小型哺乳類の分布への影響を明らかにするため、帯広市南部の農耕地に点在する30の孤立林において生息状況を調べ、分布に関わる生態学的要因の検討を行った。エゾヤチネズミやアカネズミはほとんど全ての孤立林に生息していたが、ヒメネズミは限られた林でのみ捕獲された。ヒメネズミの分布に関わる要因について分析を行ったところ、河畔林からの距離が分布に関与していることが分かった。また、自動撮影カメラを用いてエゾリスの分布について調査を行い、面積、河畔林からの距離、オニグルミの存在がその分布に関わっていることを明らかにした。次に生息環境の縮小・分断化が個体群の遺伝的多様性に及ぼす影響を明らかにすることを目的に、およそ20km四方に点在する34の孤立林(0.3-7.6ha)においてエゾヤチネズミを捕獲し、673頭においてミトコンドリアDNAのコントロール領域の塩基配列(436bp)を解読した。各孤立林における標本数と塩基配列のタイプ数の間には正の相関関係があり、標本数の多い孤立林個体群ほど多様性が高かったが、孤立林の面積と観察されたタイプ数や多様度の間には有意な関係性は見られなかった。また、孤立林個体群間の遺伝的距離と孤立林の地理的距離の間には有意な関係は見られず、距離による隔離は検出されなかった。これは各孤立林における遺伝的浮動の効果が孤立林間の遺伝的交流の効果と比べて高いことによると考えられた。本研究から、小型哺乳類において生息環境の分断・縮小の影響を受けやすい種とそうでない種がいることが明らかになり、分布に影響を受けにくいと考えられる種においても、生息環境の分断・孤立化は個体群の遺伝的多様性に影響を及ぼしていることが明らかになった。野生動物、特に移動能力の低い動物個体群の保全を行う場合には、分布だけではなく遺伝的な面にも注意を払う必要があることが明らかになった。
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