研究課題
今年度は、各調査地点に設けたシカ採食排除区と対照区において、下層植生の調査を毎月行い採食の影響を定量的に評価するとともに、各地点でシカの直接観察及び自動撮影カメラや糞数カウントによる個体数センサスを毎月行い、植生調査との関係を解析することを目的とした。シカの密度指標として調査した4つの指標値(ラインセンサスによるで推定密度、自動撮影カメラによる撮影頻度、糞塊数、下層植生の採食量(=採食排除区と対象区の現存量の差)の間の相関関係を調べた結果、ラインセンサスによる推定密度と下層植生の採食量との間に有意な正の関係が得られた。この理由として、自動撮影カメラや糞塊数が調査地点の環境条件や気象の条件の影響を受けやすいのに対して、この2つの指標が広範囲の密度を反映した比較的安定した値を与えることができるためだと考えられた。また、樹木実生の生存率もこの2つの指標値が高いところで低いという関係が得られた。下層植生の採食量の調査は、ラインセンサスに比べて少ない労力で行えることから、大台ケ原のようにミヤコザサが優占している場所では、簡便で有効な密度指標として使えるだろう。さらに、大台ケ原のシカの餌の大部分はミヤコザサであることから、ミヤコザサの現存量と生産量からシカの環境収容力を計算することが可能である。逆に、森林の天然更新を可能となるようなシカの目標密度を設定するならば、ミヤコザサの生育面積を管理することで、大台ケ原のシカの個体数を調節できる可能性がある。来年度はこの観点から、大台ケ原の森林生態系管理手法について提案する。
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Ecological Research 22
ページ: 706-711
日本森林学会誌 89
ページ: 297-301