研究課題
大台ヶ原全域から上層木(トウヒ・ウラジロモミ・ブナなど)と下層植生(ミヤコザサ・スズタケ・ミヤマシキミなど)の異なる9箇所の定点調査区を設定した。シカの密度指標として、各地点での下層植生の消失量(=採食排除区と対象区の現存量の差)、シカの糞塊数、自動撮影カメラによる撮影頻度の調査、および7つの調査区を範囲に含む15.3kmのルート沿いにシカの個体数センサスをそれぞれ毎月行った。解析の結果、ラインセンサスの結果をもとに100m半径で推定した調査区周辺のシカ密度、シカの年間の糞塊加入数、下層植生の年間消失量との間に有意に正の関係が得られた。この結果から、シカの採食にともなう下層植生の消失量が簡便で有効なシカ密度指標であることが分かった。実生の生存率をシカ密度と下層植生とから説明するモデルを階層ベイズモデルを用いて作成した。このモデルを使って、森林の天然更新を可能となるようなシカ密度を達成するために下層植生を刈り取る植生タイプの優先順位を決定することができると同時に、管理後の実生の生存率を調べることができる。つぎに、上記の結果をもとに算定した植生タイプごとのシカ密度指標と大台ヶ原における各植生タイプの分布と面積(環境省資料)とから、大台ヶ原における密度分布図を作成した。この分布図をもとに、下層植生刈り取り面積を決めることができると同時に、刈り取り後のシカ密度を算定することができる。これらの手法によって、大台ヶ原の広域的な森林生態系管理のために、シカの目標密度(=環境収容力)に応じた下層植生の管理を行うことが可能となった。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件) 図書 (1件)
日本森林学会誌 91
ページ: 111-119
日本緑化工学会誌 34
ページ: 516-523
日本生態学会誌 60(掲載確定)(印刷中)
Forest Ecology and Management 256
ページ: 129-135
日本森林学会誌 90
ページ: 335-341