研究課題/領域番号 |
18380099
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
石田 清 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, グループ長 (10343790)
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研究分担者 |
金指 あや子 独立行政法人森林総合研究所, 企画調整部, 室長 (60353645)
戸丸 信弘 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50241774)
谷 尚樹 独立行政法人森林総合研究所, 森林遺伝研究領域, 主任研究員 (90343798)
菊地 賢 独立行政法人森林総合研究所, 森林遺伝研究領域, 研究員 (10353658)
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キーワード | シデコブシ / 遺伝的荷重 / 近交弱勢 / 湿地縮小 / 小集団化 |
研究概要 |
湿地の縮小によって個体数が減少したシデコブシの集団において、繁殖と実生の生存にどの程度遺伝的荷重が現れるのかを推定するため、岐阜県土岐市の大集団で得られた交配実験種子(自殖種子・他殖種子)を用いて発芽・栽培実験を行い、胚生存率(受精直後〜種子段階の生存率)と初期生存率(受精直後〜1年生実生段階までの生存率)に現れる近交弱勢の大きさ(δ値;δ=1-[自殖子孫の生存率]/[他殖子孫の生存率])を測定した。このδ値に基づいて、両親の共祖係数と子孫の初期生存率の関係を推定した。また、この集団の成木110個体から葉を採取してマイクロサテライト5遺伝子座で分析を行い、成木2個体間の共祖係数と個体間距離との関係を求めた。これらの交配個体間距離、交配個体間の共祖係数、子孫の生存率の3者間の関係から、湿地の縮小によって大集団が小集団となったときに次世代の生存率がどの程度減少するのかをMorton et a1.(1956)のモデルを用いて推定した。さらに、この小集団に集団問交配を行ったときに、次世代の初期生存率がどの程度増加するのかを推定した。これらの解析を行った結果、自殖子孫の胚生存率と初期生存率に大きな近交弱勢が現れることが明らかとなった(初期生存率のδ値=0.84)。一方、成木のマイクロサテイト分析から、血縁関係のある個体間の距離は最長で10m程度であると推定された。これらの結果に基づいて交配個体間距離とその子孫の初期生存率との関係を解析した結果、生育地が縮小して交配個体間距離が5m以下になると、次世代の初期生存率が大集団(交配個体間距離が0〜40m以内と仮定した集団)よりも約20%低くなると推定された。さらに、交配個体間距離が5m以下となった小集団に集団間交配を行うと、次世代の初期生存率は、放置した場合よりも約40%高くなると予想された(放置した場合の子孫の初期生存率は集団間交配子孫の値の71%と推定される)。
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