研究概要 |
種子および成木の遺伝分析(マイクロサテライト分析)及び交配(自家受粉と他家受粉)・栽培実験に基づいて, (1) 二親性近親交配の頻度(受精直後の胚段階に占める二親性近親交配子孫の頻度)と二親性の近交弱勢によって生じる適応度の減少量(ランダム交配子孫に対する相対減少量 ; 二親性近交荷重)を推定する方法、及び, (2) 交配距離と子孫に現れる二親性近交荷重との関係を推定する方法を開発した。これらの方法を用いて, 岐阜県土岐市の絶滅危惧樹木シデコブシの集団を対象に, 二親性近親交配の頻度(受精直後の頻度)と二親性近交荷重(胚〜実生までの生存率の平均減少量)を推定した。その結果, 二親性近親交配の頻度は44.5%, 二親性近交荷重の大きさは0.045(二親性近親交配によって集団の平均適応度が5%減少)と推定された。さらに, 交配距離と二親性近親交配との関係について検討した結果, 7mよりも交配距離が減少した時に二親性近親交配と二親性近交弱勢が現れること, そして, 交配距離が1.5m以下(最近隣の個体間距離に相当)となった時には強度の二親性近親交配が生じ, 実生期までの生存率がランダム交配子孫に比べて57%減少(自然交配による他殖子孫に比べて51%減少)する可能性があることが明らかとなった。
|