研究概要 |
平成20年度は、枠組壁工法の耐力壁-床組間のせん断力伝達におよぼす摩擦抵抗の影響を把握するため、次のような実験的、解析的検討を行った。 1. モデル試験体の静的水平加力試験 : 耐力壁下部と床組の釘接合部を抜き出したモデル試験体を作製し、そのせん断耐力に及ぼす鉛直荷重による摩擦抵抗の影響を実験的に測定した。その結果、この部分の摩擦抵抗は、壁下枠と床面材の接触状態により大きく変動すること、その下限値は両者の動摩擦係数から予測できることが明らかとなった。この試験結果に基づき、枠組壁工法の耐力壁-床組間のせん断力伝達における下枠-床面材間の摩擦抵抗に対する実用的評価法を検討し、その影響範囲についての試算例を示した。 2. モデル試験体の加振試験 : 1. の静的試験と同様なモデル試験体を振動台上に設置して加振試験を行い、動的な水平力が加わった場合の、耐力壁と床組の接合部における応答挙動を観察した。その結果、摩擦限界内では、床組と耐力壁が一体となって応答するが、その上限を超えると上下の応答にずれが生じ、これが建物の倒壊を緩和する効果をもたらしている可能性が示唆された。 3. 研究代表者の既往の研究成果に基づき,木材ボルト接合部のせん断耐力に及ぼす摩擦抵抗の効果について数値シミュレーションを行い、ボルトの変形によって生じる2次応力に依存する摩擦抵抗の影響を示した。 初年度から本年度までの成果を総括し, 木質構造の設計において摩擦抵抗を無視すべき部分と考慮可能な部分を示すとともに, 可能な部分についての実用的評価方針を整理した。
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