研究概要 |
本研究ではまずホワイトサイプレス精油成分の分画および分析を試みた。液-液分配から精油成分の多くは中性であることが明らかになった。水熱蒸留では精油成分中の揮発性に富んだ成分を分画することができ,分取カラムクロマトグラフィーを用いるとより細かな分画が可能であることが分かった。またホワイトサイプレス精油の主成分はモノテルペンの(-)-citronellic acidとセスキテルペンアルコールのguaio1であるが,時間が経過するとguaio1の他にα-,β-,γ-eudesmolの比率が増加した。次に精油の肥満抑制効果についてマウスおよびラットを用いて検討した。マウスに精油を吸入させるとコントロール群に比べて100倍希釈群では体重が増加した。また1,000倍希釈群の体重が減少し,血中のグリセロール(GL)濃度が増加したことから肥満抑制効果を示すには精油の最適濃度が存在することが明らかになった。カニュレーションラットを用いた精油吸入実験では,TGからGLへの分解能が高まる可能性が考えられた。さらに,精油の主成分のひとつであるグアイオールを嗅がせたことにより血清のコレステロール(TC)とTGを減少させる効果,シトロネル酸は肝臓のTC, TGを減少させる効果が見られた。このことより精油吸入の肥満抑制効果にはこの2つの成分が大きく関わっているのではないかと考察した。また,精油の吸入により血中カテコールアミンの減少が抑えられ,白色脂肪組織内でのTGの分解能低下を防ぐ可能性が考えられた。 さらに本研究ではカプサイシンを認識するバニロイドレセプターに対してホワイトサイプレス精油成分が結合性を有していることが明らかとなり,精油吸入によりTGが減少したのは,この受容体に精油成分が結合して中性脂肪分解作用が活性化されたためではないかと考えられた。
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