これまでに我々はBCフィルムが燃料電池電解質膜に適した素材である一方、プロトン伝導性に劣ることを明らかにしてきた。そこで今回は、BCフィルムのプロトン伝導性の向上を目的として、硫酸基を導入した硫酸化BCフィルムを調製し、力学特性、プロトン伝導性および発電特性の点についてCMC複合BCフィルムと比較した。 硫酸化BCフィルムは、BCフィルムをEGDEで架橋した後、SO_3Pyridine/DMFを用いて硫酸化することで調製した。プロトン伝導率は交流インピーダンス測定によって求め、発電性能についてはPEFCの単セルを組み立てて電流および電圧を測定した。 CMCBCフィルムのプロトン伝導率は25℃で20〜60μScm^<-1>であり、電解質膜には10^<-2>〜10^<-1>Scm^<-1>程度の伝導率が求められることを考慮すると極めて低い値であった。これはBCフィルム内部にCMC水溶液が浸透しなかったことが理由として考えられる。一方、硫酸化BCフィルムのプロトン伝導率は硫酸化の程度に比例し、伝導率は0.2〜0.9mScm^<-1>であった。さらに、架橋した硫酸化BCフィルムは未架橋のものに比べて著しく膨潤が抑制され、硫酸化により強度は低下したものの電解質膜に求められる40MPa以上の強度を有していることが分かった。また、硫酸化BCフィルムを電解質膜として用いた燃料電池は9.3mW・cm^<-2>の高い電力密度を示した。 以上より、CMCBCフィルムより硫酸化BCフィルムの方がプロトン伝導性および発電性能の点で優れており、電解質膜として適していることが分かった。また、硫酸化BCフィルムは架橋処理を施すことが膨潤抑制の点で効果的であった。
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