研究概要 |
1.ウロコ形成細胞分化誘導因子のcDNAクローニング:哺乳類の骨芽細胞分化のマーカーとなるオステオカルシン(OCN)とオステオネクチン(SPARC)のcDNAクローニングをキンギョを材料としておこない、その全塩基配列を決定した。これらは骨芽細胞より分泌される基質タンパク質である。OCN,SPARC,昨年度クローニングした骨芽細胞分化因子Runx2 mRNAsの再生鱗における発現部位をin situ hybridization法を用いて確認したところ,ウロコ形成細胞に強い発現を認めた。このことから,ウロコ形成細胞も骨芽細胞同様 Runx2 により分化が誘導され,基質タンパク質としてOCNおよびSPARCを合成することを示す。また,ウロコ周辺にこれらを弱く発現するウロコ形成細胞の前駆細胞を確認した。今後,これちmRNAの定量PCR系を開発し,再生過程における発現動態を調べる。 2.ウロコの非コラーゲン性基質タンパク質の性状解析:キンギョウロコの繊維層板より非コラーゲン性タンパク質を抽出し、SDS-PAGEにより解析した。酢酸抽出により多くの分子が抽出されることを確認した。これら分子はそのほとんどがコラーゲンと強く関係(結合)していたが,一部関係が弱い(結合していないか弱く結合している)ものも存在した。今後この二つの分画の主要な分子の構造をTOF-MSを用いて決定する。 3.ウロコのI型コラーゲンaサブユニットの発現解析:キンギョI型コラーゲンのa1、a2、a3サブユニット鎖mRNAの定量PCR系を確立した。ウロコを含む各種臓器における発現量を比較したところ,3つのサブユニットの発現量の比率が大きく異なっていた。このことは臓器によりコラーゲンのa鎖組成が異なり,結果として変性温度などコラーゲンの生化学的性質が異なる可能性を示す。今後タンパクレベルで各臓器のコラーゲンのa鎖組成とその生化学的性質を比較する。
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