研究概要 |
1 鱗細胞に発現するRunx2, SPARC, Osteocalcin mRNAの鱗再生時の発現変化の定量と, 発現部位の再生過程による変化を確定するとともに分裂細胞を特定した。これにより, 再生過程において鱗形成細胞の前駆細胞がどこに存在し, どのような段階を経て分化するか, 分化に果たす上記因子の機能の推定が可能になった。ウロコ細胞培養系を確立する重要な基礎的知見を得た。 2 ウロコ線維層板から抽出した非コラーゲン性タンパク質画分のうち, コラーゲンとの結合が弱い分子の画分からsid4を同定した。sid4はゼブラフィッシュで同定され, 発生過程において細胞外基質とインタラクションして組織のパターニンングと器官形成に関与することが想定されている分子であるが, 成体組織における分布や機能はまったく不明である。今後詳細にその機能を調べる必要がある。 3 キンギョ各臓器からコラーゲンを抽出しSDS-PAGE像を比較したところ, 浮き袋・皮膚ではウロコ・筋肉・腸に比べてα2鎖の分子量が少し小さかった。α2鎖が小さい臓器では変性温度が数度高かったことから, α鎖の翻訳後修飾とコラーゲン変性温度に強い関連があることが予想された。魚類コラーゲンの変性温度とコラーゲン分子の修飾の関係を示唆した最初の結果である。 4 強磁場下におけるコラーゲン再線維化ゲルの線維配向と磁場強度との関係の研究を進め, 磁場強度を12テスラと6テスラにて3時間照射しだ場合, どちらも線維がある程度配向し, 両者に違いが無かった。また, 創出したコラーゲン配向ゲルの引っ張り強度は, 6テスラにて配向させたゲルは約60MPa, 磁場を用いない無秩序配向ゲルでは約70MPaであった。粘弾性特性は12テスラで作製したゲルより, 6テスラで作製したゲルの方が高かった。このように, 配向により各種物理特性が変化することを明らかにした。今後, 線維方向による引っ張り強度や粘弾性強度に関して検討を行う必要がある。
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