(1)海産白点虫のin vitro培養法を用いることにより、寄生期虫体の発達成長が観察できることを利用し、本虫の摂食機構を検討した。培地内の虫体周囲の魚類細胞は断片化、小型しており、虫体はこれを積極的に接種し、体内に蓄積していた。これらの虫体周囲の細胞ならびに虫体内の存在する細胞の核をDAPI染色したところ、これらの細胞内の核はアポトーシス細胞に特徴的な濃縮化、断片化を呈していた。また、虫体周囲の細胞をTUNNEL法によるアポトーシス検出キットで染色してところ、陽性反応をしめした。In vitro培養とあわせて、感染魚内の寄生期虫体についても核の染色ならびたアポトーシス検出キットでの染色を施したところ、虫体組織の周辺の宿主組織および虫体内にはアポトーシス細胞の特徴を示す細胞が観察された。また、宿主離脱直後の虫体から得られたDNAを電気泳動に供したところアポトーシス細胞に特徴的な180bpのラダーが検出された。以上の結果から、海産白点虫は宿主細胞にアポトーシスを引き起こして、これを餌として摂取していると推察された。 (2)淡水白点虫に防除効果がある可能性が示唆されて各種薬剤8種を混入した培地を用いて虫体を培養し、その生残と成長を検討した。その結果、ある系の薬剤3種では(特許申請の可能性があるため具体的な名称は伏す)2uM以上で培地内の魚類細胞に細胞毒性を示すものの、0.02uMという極めて低い濃度で、虫体の殺効果ならびに成長抑制効果を示した。この結果より、これらの薬剤は海産白点虫の駆虫薬として利用できる可能性が示唆された。
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