本年度は、(1)海産白点虫の化学療法を目的として、前年までにin vitro培養状態での殺虫作用が強いことが明らかになったイオノフォア系抗生物質類について、魚体への毒性、治療効果の検討、(2)海産白点虫の治療法開発のための比較研究として昨年度確立してスクーチカ繊毛虫の攻撃試験法を用い、イオノフォア系抗生物質のスクーチカ繊毛虫症への治療効果の検討、(3)海産白点虫の核の発達様式の研究を計画した。 (1)ヒラメを用いた経口投与実験で、サリノマイシン、センジュラマイシンについて毒性を調べ、一日一回の経口投与の場合、飼料中200ppm/gまでの添加ではこれらの薬剤添加に起因する魚の死亡は認められず、安全性が認められた。そこで、サリノマイシン、センジュラマイシンを5日間経口投与(200ppm/g飼料)したのち海産白点虫で攻撃し、あるいは攻撃前5日間と攻撃後3日間経口投与し、その有効性を見たところ、サリノマイシン投与では、攻撃されたヒラメ体内で成長して宿主を離脱する虫体数が有意に減少し、また、宿主を離脱して虫体のサイズも有意に減少した。また、センジュラマイシンでは、宿主を離脱する虫体数は減少は傾向はあるものの有意差は認められなったず、一方、虫体のサイズは有意に減少した。この結果に基づき、ヒラメにサリノマイシン200ppm/g添加した飼料を毎日1回経口投与し、合わせて海産白点虫による攻撃をおこなったところ、3区もうけた経口投与区すべてにおいて、すべての個体が死亡するまでに要する日数が長くなり、サリノマイシンの海産白点虫症の予防治療効果が確認された。 この研究成果は、特許として東京大学より出願された。 (2)サリノマイシン、モネンシンともに、ヒラメに寄生するスクーチカせん毛虫にin vitroで殺虫効果が認めれらた。そこで、ヒラメをスクーチカせん毛虫で攻撃し、サリノマイシン、モネンシンによる治療を試みた。しかしながら、海産白点虫の場合とことなり、顕著な効果を認めれらなかった。 (3)海産白点虫の核の発達様式については、宿主核の有効は識別にはいたらず、残念ながら、十分なh成果が得られなかった。
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