研究課題
大船渡湾内の循環流の明瞭な季節変化の把握と物理-生態系テデル解析による養殖貝類の環境収容力について成果が得られた。湾内の循環は、夏季の湾口部では極浅い層の表層の流出に対して、10-20m深を中心とした中層流入が見られ、湾口部と屈曲部髄との間に鉛直循環の境界が存在し、少なくとも2つの循環セルの存在が確認できた。このような循環系の存在下では、新鮮な外洋水の流入が限られた範囲・深度でしか期待できず、流れの極弱い湾奥部では、中層貫入の直接的な影響は見られず、湾口底層部でも貧酸素水が発生しやすいことが分かった。しかしながら、風の数日間の変化で、湾内循環が一時的に冬季の循環パターンになり、湾内底層に外洋水が湾奥部まで入り込んだことを示す結果が得られ、このような突発的なイベントが、夏季底層滞留水の解消に大きく役立つ事が予測される。他の湾との対比から、大船渡湾の地形、特にシルの存在が循環に大きな影響を与えていることが示唆された。一方、冬季は、全域で表層の流出成分が見られ、それに対応する底層付近には強い流入成分が確認でき、大きな1つの鉛直循環セルが存在している。冬季も湾奥に向かって流速が弱くなるものの、夏季よりは強く、底層水の滞留の可能性は小さいことが明らかになった。大船渡湾における養殖二枚貝の最適養殖密度の解析から、1)現状の養殖密度を低下させても成長速度に大幅な改善が見られないことから、短期的な成長においては現状の養殖密度はほぼ妥当であること、2)養殖貝類の成長速度は養殖実施場所によって異なり、捕食圧が高くなる程、空間的な相違が大きくなること、3)湾口に防潮堤のある大船渡湾では、成長速度の空間的な変化が複雑に生じていることが明らかになった。これらの結果を大槌湾での知見と対比させて、海洋環境特性と環境収容力との関係解析から最適複合養殖策を明らかにした。
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Deep-Sea Research II (印刷中)
Geophysical Research Letters 35
ページ: L12601, doi:10.1029/2008GL033354
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ページ: 245-258