研究課題
京都府北部を流れる由良川下流域から丹後海沖合の水深150mまでの海域において、76種のマクロベントスとPOMの炭素・窒素安定同位体比を分析するとともに、主要種のセルロース分解酵素活性を調べた。河川下流域のベントスの多くはセルラーゼ活性を有し陸域起源有機物を積極的に利用していた。しかし、稚貝期を海で過ごし成長とともに河川を遡上するイシマキガイなどでは、陸域起源有機物と海域起源有機物が混在する汽水域では、海域起源有機物を選択していることがわかった。一方、河口・沿岸域の多毛類は全般に陸域起源有機物の利用能が高いと推定され、生息場所の海底堆積有機物を起源にかかわらず利用した。河口・沿岸域では、水深とともに陸域源有機物の利用率が低下した。マクロベントスの主要な有機物源は、下流域では陸域起源有機物と海域POM(植物プランクトン由来)起源有機物、河口域では海域POM起源有機物、底生微細藻類起源有機物、海藻起源有機物であり、海域では水深が増すにつれ海域POM起源有機物の貢献度が上昇した。しかし、水深150mの海底においても、底生微細藻類の生産と有機物源としての貢献が確認されたことは注目に値する。河口・沿岸域において生物生産の鍵種となるニホンハマアミは、底生微細藻類と沈降植物プランクトンを食物源とした。さらに、線虫類などのメイオベントスが高いセルラーゼ活性を有することを確認した。河川下流域を除く海側の海域では、生物生産に対する陸域起源有機物の直接的な貢献は大きくなく、リターなどの植物に由来する有機物は河川では動物に利用されるが、海域では線虫や細菌による分解という腐食食物連鎖に入る必要のあることがわかった。
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J. Applied Ichthyol
Estuarine, Coastal and Shelf Science
Estuarine, Coastal, Shelf Science
Proceedings of the 5th World Fisheries Congress 2008 CD版