研究課題
本研究は、栽培漁業の対象となっている海産魚類の生態を寄生虫を生物標識として用いることによって解明しようとするものである。本年度は、瀬戸内海の主要栽培漁業種であるメバル、クロダイ、マダイの外部寄生虫相を調べた.(1)メバルには同所的に生息する3色彩型(A型、B型、C型)が認められ、単生類のMicrocotyle sebastisci(鰓)とMenziesia sebastodis(鰓、鰓弓)、カイアシ類のTaeniacanthus sebastichthydis(鰓、鰓蓋)、Peniculus truncatus(鰭)、カリムス幼体(体表、鰭)、ワラジムシ類のウミクワガタ類幼生(体表)を得た。多く寄生していた3種(M.sebastisci、M.sebastodis、T.sebastichthydis)の感染状況(寄生率と寄生数)は3型間で異なり、M.sebastisciはC型で高く、他2種はB型とC型で高かった。また3種ともA型での感染レベルは一様に低かった。このことから、メバル3型間で外部寄生虫の感染様式は異なっていることが明らかになった。(2)クロダイの外部寄生虫を調べた結果、鰓にカイアシ類3種(Alella macrotrachelus、Lernanthropus chrysophrys、Caligus epinepheli)と単生類1種(Aspinatrium spari)が高頻度に見られた。A.macrotrachelusは初夏と秋に寄生数が多くなる傾向を示したのに対し、C.epinepheliの寄生数は夏に少なく秋から増加する傾向を示した。これにより、各寄生虫は種によって異なる個体数の季節変動様式を有することが示唆された。(3)マダイ幼魚を調べた結果、沿岸に定着後すぐからワラジムシ類のタイノエの寄生を受けていることが明らかになった。