研究分担者 |
山岡 耕作 高知大学, 教育研究部・総合科学系, 教授 (20200587)
大塚 攻 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 教授 (00176934)
海野 徹也 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 准教授 (70232890)
奥田 昇 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (30380281)
山内 健生 富山県衛生研究所, がん研究部, 研究員 (00363036)
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研究概要 |
本研究は,栽培漁業の対象となっている海産魚類の生態を,寄生虫を生物標識として用いることによって解明しようとするものである。本年度は,瀬戸内海産マダイの地域群を寄生虫相によって識別することを試みたほか,ヒダビルの生物的知見の集積を図るとともに,魚類に寄生するエラオ類チョウ属に関する文献を整理して目録を作成した。以下の知見を得た。 (1) 瀬戸内海の6水域からマダイ1歳魚を得て寄生虫相を調べた結果,単生類5種,吸虫類4種,条虫類2種,線虫類4種,鉤頭虫類1種,ヒル類1種,カイアシ類10種,等脚類2種の合計29種を得た。これら寄生虫の感染状況に基づくと,瀬戸内海産マダイ1歳魚には3つの地域群が存在すると推測された。 (2) 春季に河口域で漁獲したサツキマスの胃中に海産ヒダビルLimnotrachelobdella okaeを見出したことから,サツキマスは海洋で越冬後,沿岸性のヒダビル等を捕食しつつ河川に遡上することが明らかになった。本事例はヒダビルが魚類に被食された初めての記録である。 (3) 中国から種苗で輸入され日本で養殖されたカンパチにヒダビルの寄生を認めた。このヒルは日本でカンパチに寄生したと考えられた。カンパチは新宿主である。 (4) 過去にわが国で出版された文献に基づき,魚類寄生性チョウ類9種と未同定種に関する情報を整理し,地理的分布や宿主範囲等を明らかにした。
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