研究概要 |
クローンギンブナ及び同じコイ科魚類でゲノム解析が進んでいるゼブラフィッシュを用いて下記の課題について検討した。 1) 細胞障害性Tリンパ球(CTL)の機能発現に関わる遺伝子の単離 本年度はウイルス感染において主要な役割を果たすCTLの機能発現に関わるパーフォリンPerfolinおよびグランザイムGranzyme遺伝子を単離し発現解析を行った。ギンブナのperforinには3つのアイソタイプ(Pfn-1、Pfn-2及びPfn-3)が存在し、アロ抗原刺激後の鱗移植部位では、Pfn-1のみ強く発現することが明らかとなった。21種類存在するゼブラフィッシュのGranzyme様遺伝子のうち5種類の遺伝子についてRT-PCR法により発現解析を行ったところ、4種類のGranzymeに細胞性免疫への関与が認められた。 2) T細胞サブセットの分離のためのギンブナCD4に対するモノクローナル抗体(MAb)の作製 CD8αに対するMAb作製と同様の方法を用いCD4に対するMAbを作製した。CD4に対するMAbは、ギンブナCD4を細胞表面に発現するラット腎臓細胞(NRK)のみを認識し、slgM陽性のBリンパ球およびCD8α陽性のTリンパ球とは反応しなかった。形態的にリンパ球を認識しており、50%以上の胸腺細胞と反応した。セルソーター及び免疫磁気抗体法によりギンブナ頭腎よりCD4陽性T細胞を分離し、遺伝子の発現をRT-PCR法により解析したところ、CD4及びTCR遺伝子のみが発現していることが判った。以上のことから、本MAbはCD4陽性のヘルパーT細胞を認識していると考えられた。 3) IL-12遺伝子の単離及び組み換え体の作製 ギンブナよりIL-12p35およびp40遺伝子を単離し幾つかのアイソタイプが存在することを明らかにした。IL-12p35は1種類しか存在しないが、IL-12p40にはa,b,cの3種類のアイソタイプが存在し、さらにa及びcには2種類のバリアントが存在することが明らかとなった。IL-12p35およびIL-12p40aを昆虫細胞に組み込み、共発現させてIL-12の組み換え体を作製した。組換えIL-12をギンブナの頭腎細胞に加えところ、IFN-γの発現誘導が観察された。
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