研究概要 |
(長期変動)西部北太平洋における低次生態系の十年規模変動の要因を明らかにするために,親潮域で過去50年間に採集された動物プランクトン標本(オダテコレクション)を分析した。H18年度は主要動物プランクトン3種の安定同位体比を測定した結果,90年代の温暖化傾向に伴うδ^<15>Nの低下が明らかになった。90年代以降親潮域では早春と夏季に同種の現存量が増加していることが報告されており,δ^<15>Nの低下はその要因がボトムアップ,つまり餌環境が量的・質的に変化したことを示唆していた。温暖化に伴う栄養塩の供給量減少によりここ数十年の間に親潮の春季植物プランクトンブルームの規模が縮小し,年間の基礎生産量は近年減少傾向にあることが報告されているが,本研究の結果は,それにもかかわらず植物プランクトンの生産時季が長くなった(早く始まり遅く終わる)ことが動物プランクトンの生産に有利に影響したことを示していた。 (現場観測)海洋環境や植物プランクトンの量・質的変化に応じて動物プランクトンの安定同位体比(δ^<13>C,δ^<15>N)がどのように変化するのかを詳細に調べるため,東北水産研究所の定線観測において動物及び植物プランクトンの標本を採取し分析することを試みた。H18年度は試験的に7月の観測を実施したが,その結果を受けてH19年度に3〜7月に毎月観測を実施し本格的にデータ収集・解析を行う予定である。 (国際協力)PICES(北太平洋海洋科学機関)や,SCOR(Scientific committee of Ocean Research)関連の国際会議に出席し,各海域で長期動物プランクトンデータを有する研究者と研究協力について協議し,安定同位体比を用いた海域比較研究の実施を提案した。また水産総合研究センター主催で開催された米国・カナダの長期変動プロジェクトとの共同研究に関するワークショップにおいてコンビーナを務めた。
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