研究分担者 |
伏谷 伸宏 北海道大学, 大学院水産科学研究院, 客員教授 (70012010)
安井 肇 北海道大学, 大学院水産科学研究院, 助教授 (00200494)
西村 一彦 北海道立衛生研究所, 健康科学部, 研究員 (90414284)
北出 幸広 北海道大学, 大学院水産科学研究院, 特任助教授 (90399999)
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研究概要 |
植物がプロスタグランジン(PG)を生成することは稀であるが,海藻のオゴノリGracilaria vermiculophyllaはこれを多量に合成することで知られる。しかしながら,その生成経路や機能については不明である。本研究はオゴノリ及び近縁海藻におけるPG合成の全容を明らかにすることを目的としている。本年度得られた成果は以下のように要約される。 (1)オゴノリを種々の条件下(凍結解凍,冷蔵保存,室温保存,加熱)処理して,細胞膜を構成する脂質成分の変動を観察した。その結果,凍結解凍した場合,細胞膜を構成するグリセロ糖脂質よりPGの前駆体脂肪酸であるアラキドン酸が多量に遊離することを見出した。 (2)アラキドン酸遊離に関与する酵素として,脂質加水分解酵素(ガラクトリパーゼ)を分離精製し,その性質を明らかにした(分子量約40kDa,至適温度37℃,至適pH8.0)。本酵素は,モノガラクトシルジアシルグリセロールやホスファチジルコリンに対して高い活性を示すことを認めた。 (3)(1)と(2)の結果から,オゴノリは細胞膜が損傷を受けるとガラクトリパーゼによって細胞膜脂質が加水分解されてアラキドン酸を遊離し,これに種々の酵素が作用してPGを生成するものと推測した。 (4)オゴノリ及び近縁海藻におけるPG合成過程の全容を明らかにするためには,アラキドン酸代謝産物を迅速かつ精密に分析する方法が不可欠であることから,本研究では質量分析法を検討した。その結果,マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI/TOF-MS)がこの目的に極めて有効であることを認め,海藻由来PGの簡易同定法を開発した。 (5)MALDI/TOF-MS法を用いて,新たに数種の海藻(モズク等)にPG産生能のあることを見出した。
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