研究概要 |
紅藻オゴノリのGracilaria vermiculophyllaはプロスタグランジン(PG)を多量に生合成する稀な海藻であるが, その生成経路や生理機能については不明である. 本研究の目的はオゴノリ及び近縁海藻におけるPG合成の全容を明らかにすることである。本年度得られた成果は以下のように要約される。 1.日本産オゴノリG. vermiculophyllaとニュージーランド産オゴノリ(G. chilensisなど)から, 新規エイコサノイド(8-ヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸=8-HpETE及び5.8-ジヒドロキシエイコサテトラエン酸=5, 8-diHETE)を見出した。 2.形体のよく似たG. vermiculophyllaとG. chilensisのエイコサノイド組成は大きく異なることが明らかになり, アラキドン酸カスケードを用いてGracilaria属海藻を化学的に分類するが可能性が示された。 3.種々のCOX阻害剤とLOX阻害剤のエイコサノイド産生に及ぼす影響を詳細に調べた結果, COX阻害剤はPG産生に影響を及ぼさないことが確認された。一方, LOX阻害剤はHETEの生成を抑制するものの逆にPGの生成を促進することが明らかになった。 4.以上の結果系ら, G. vermiculophyllaのPGの生成機構は哺乳動物とは異なり, 細胞膜脂質から遊離したアラキドン産にLOXが作用して8-HpETEが生成し, その後15-HpPGE2を経てPGE2になる可能性が推測された。
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