研究課題
1.麻ひ性貝毒現象は熱帯域でも大きな問題となっているが、発生する有毒渦鞭毛藻の生理・生態に関する情報は極めて少ない。そこで、熱帯産Alexandrium2種についてその生長、毒生産、無機態窒素利用に対する水温、光の影響を検討した。その結果、高温、高光強度環境への適応能は種によって異なり、A.minutumは高温、低光強度でも高い増殖能と毒生産能および無機態窒素利用能を維持することを明らにした。2.ベトナムハイフォン海域の定点において、Alexandrium発生量と貝類毒化程度の季節変化をモニタリングした。その結果、本海域で出現するAlexandrium種を特定するとともに、その出現時期、出現量を明らかにすることができた。本海域では同属の存在は確認されているものの、これまで貝類の高毒化は認められていない。一方で、近年海域周辺の開発が進められており、今回得た結果は将来的に海域の開発が環境に与える影響を評価する際、重要な基礎的知見になると期待された。3.岩手県沿岸はホタテガイを初めとする二枚貝養殖において、麻ひ性貝毒現象がほぼ毎年問題になっている。本海域に発生する原因渦鞭毛藻については古くから知見が集積されているが、近年その発生パターンが変化する傾向にある。そこで、8つの湾を対象に出現Alexandrium種とその毒生産について調査を行った。その結果、新たに5種の出現を確認、また有毒種の毒生産能は湾ごとに多様であることを明らかにした。これらの結果は、本海域において同属プランクトンの分布拡大・定着が進行していること、およびその発生・毒生産に貝類養殖環境が大きな影響を与えていることを示唆した。4.ホタテガイ飼育海水をベースに培地を作成、5種Alexandriumの生長・毒生産に与える影響を調べ、ホタテガイ排泄物はいずれの種に対しても促進的効果を持つこと明らかにした。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
Journal of Phycology 42巻
ページ: 786-799
Coastal Marine Science 30巻
ページ: 111-115
日本水産学会誌 72巻
ページ: 1068-1076