消費者のクローン技術に対する意識をアンケート調査に基づいて明らかにするとともに、受精卵クローン牛由来の牛肉(クローン牛肉)である旨の表示が表示方式の違いにより、消費者の牛肉に対する価値評価と選択行動にどのように影響するのか、アンケート調査で収集した選択実験回答により分析した。 回答者のほとんどがクローン技術に違和感を抱いているが、 1.受精卵クローン技術の方が体細胞クローン技術よりも相対的に違和感が少ない 2.クローン技術の仕組みとメリットを伝えると違和感が弱まったが、同技術の利用・規制の現状と問題点について情報をさらに提供すると違和感は強まる。 3.回答者の過半は通常牛肉より安価ならクローン牛肉を購入する意志がある一方、いくら安くても購入しない拒絶者も相当割合(36%)存在する。 4.クローン技術に対する潜在態度として、安全性不安、倫理的疑問視、直接的利益評価、利益疑問視の4つが確認された。 クローン属性を黒毛和牛にのみ付与し、食肉用に出荷された国産黒毛和牛に占めるクローン牛の頭数割合(クローン牛シェア)を現状レベルに設定した選択実験の回答データに条件付きロジットモデルを適用した分析から、 5.任意表示下では、クローン牛肉は通常の当該牛肉に比べ33%低く評価されるのに対し、義務表示下では一層(67%)低く評価される。 6.回答者の購入選択確率は、任意表示から義務表示に変わることにより、黒毛和牛が4ポイント増加する一方、国産牛は8ポイント減少する。 7.クローン牛肉を任意表示から義務表示に変更することによる平均的回答者の厚生変化額は4円/100gと推計され、表示義務化により消費者の厚生が改善される。 ことが明らかとなった。ただし、クローン牛シェアを10%以上に設定した選択実験では表示方式変更に有意な影響が認められなかった。この点については、選択実験の意図が回答者に適切に伝わっていない可能性があるため、次年度に実験設計を見直し検証することにしたい。
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