BSE国内対策と食用牛のBSE検査対象義務月齢変更に関する消費者の認知度をアンケート調査に基づいて明らかにするとともに、20か月齢以下の食用牛についてBSE検査を実施しなくなった場合、BSE検査済みの国産牛肉である旨の表示の有無が消費者の牛肉に対する価値評価と選択行動にどのように影響するのか、収集した選択実験回答データを用いて分析した。 大部分の回答者は、BSE国内対策としてBSE検査、肉骨粉の給与禁止が行われていることを知っていたが、 1. それら以外に実施されているBSE国内対策やBSE検査の内容についてはよく知らないこと 2. BSE検査対象義務月齢の21か月齢以上への変更に賛同(できないと)する回答者の割合は、BSE対策によってBSE感染リスクが殆ど増えないことを分かりやすく説明することで、14%から38%に増加(52%から34%に減少)することが分かった。 20か月齢以下の国産食用牛についてBSE検査を実施しなくなったとして、国産牛肉にBSE検査済みの表示をするケースと、しないケースの、回答者の原産国別牛肉に対する支払意志額(WTP)を条件付きロジットモデルの計測から推計したところ、 3. BSE検査対象義務月齢の変更に賛同する回答者では、どちらのケースでも各牛肉のWTPはほぼ同額であり、国産牛肉と輸入牛肉の間のWTP格差は最大で3.3倍にとどまるが 4. 検査対象義務月齢の変更に賛同できないとする回答者では、BSE検査済みの表示をしないケースに比べ、表示をするケースで国産牛肉のWTPは4割から5割増加する一方、米国産牛肉のWTPが国産牛肉のそれの15%(BSE検査済みの表示をしないケース)から10%(表示をするケース)と大幅に低くなることが明らかにされた。 以上の分析結果は、牛肉のリスクコミュニケーション推進に際し、貴重な情報を提供するものと考えられる。
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