研究概要 |
1.わが国の生鮮食品流通において中継流通の拠点としての機能を果たしてきた卸売市場の地位は,近年の卸売市場経由率の低下に端的に示されるように低下しつつあり,1999年と2004年の卸売市場法改正によって,卸売市場制度の改革が行われた。本研究は,このような卸売市場制度の歴史的「大転換」のもとでの卸売市場の流通機能強化の方向について,卸売企業の商業機能に着目して実証的に検討することを目的とする。 2.今年度は,(1)現段階の卸売市場と卸売市場制度改革の性格に関する検討,(2)卸売企業の商業機能に影響を与える要因としての生鮮食品需要や産地マーケティング,流通システムの変化に関する検討,(3)東京,大阪,札幌,仙台,神戸などの拠点卸売市場の実態調査,(4)釧路,尼崎,大分など中央卸売市場から地方卸売市場に転換した卸売市場や,秋田,盛岡,甲府,宇都宮など地方と市中央卸売市場の実態調査,(5)わが国と類似した卸売市場制度をもつ韓国の生鮮食品流通と卸売市場の実態調査,を実施した。 3.上記の研究の結果,次の点が明らかになった。 (1)2度にわたる卸売市場法改正は,わが国の卸売市場制度の根幹に関わる改革であるとともに,卸売市場流通システム転換の契機となるものであり,さらに委託販売手数料の自由化は,卸売企業の商業機能のあり方は大きな影響を与えることが予想される。 (2)拠点卸売市場においては,他市場卸売企業の統合,小売企業へのサプライチェーンの構築,物流機能の強化,外食・中食企業への販売対応,など卸売企業の商業機能拡充の取組が見られる。 (3)地方卸売市場への転換が卸売企業の商業機能拡充の契機となった事例が見られるが,反面で卸売市場の公共性が希薄化する傾向も見うけられる。 (4)調査を行った地方都市中央卸売市場は,いずれも厳しい状況に置かれており,立地条件に適合した特色ある取組など今後の方向を模索している状況にある。 (5)韓国においても,小売企業の急速な大型化や生鮮食品輸入の増加によって,従来の卸売市場を中心とした生鮮食品流通システムに大きな変化が現れてきている。
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