研究概要 |
1)既存の水利施設の修復事例の調査および過去の災害における損害経費の調査2004年台風23号により淡路島で決壊したため池を対象にした調査を行った。ため池台帳を基本としたデータベースとレーダーアメダス,地形情報データ,マルチスペクトル衛星画像をGISで処理して,判別分析により決壊の予測式を確立した。これにより越流決壊のようなメカニズムが複雑な現象の決壊予測が可能となった。また,被害の査定額情報とため池データベース情報を用いて,重回帰分析により被害の損失期待値予測式を求めた。農業生産停止に伴う損害予測をデータベースからの受益地面積と淡路島の単収平均値および全国の平均単価から予測した。 2)LCC算定のためのリスク解析 以上の決壊予測式,損失期待値予測式を用いて,個々のため池の決壊による年間リスクを予測した。また,ため池堤体自体の劣化はないものとし,実効降雨の年発生確率を測候所の30年間のデータから算出し,長期にわたる決壊確率の変化を計算する手法を開発した。これにより,リスクの経年変化も解析することができるようになった。さらに,ため池のライフサイクルコストを最小化する例として天端拡幅工事による改修による決壊確率の低減を考慮した計算法を示した。 3)非破壊検査からダメージパラメータを抽出する手法についての検討 コンクリート製の水利構造物の非破壊検査手法として有効な打音法の基本的特性に与えるコンクリート中の水分の影響を調べる実験的検討を行った。その結果,水分によって弾性波速度および卓越周波数が変化することをしめした。また,土構造物の非破壊検査手法として,電磁波を用いた地中レーダーの新しい解析手法を提案した。これにより,内部が比較的均一な土構造物においても地中レーダーによって,内部水分状況を推定できることを示した。さらに,同様の手法を簡易な弾性波試験法にも適用することにより,土構造物の内部推定が弾性波でも安価で実施できることを示した。
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