研究課題
前年度に引き続き、宮城県大崎市(旧田尻町)伸萠地区ならびに新潟県阿賀野市笹神地区の冬期湛水水田圃場および周辺水田等における植生、水生昆虫、魚類の生息分布状況を精査するとともに、最終年度のとりまとめを意識して分担者相互間の連携を強化した研究推進を図った。新潟県阿賀野市沢口地区と宮城県大崎市伸萠地区における魚類調査結果(2006年度:4科11種291個体、2007年度:7魚種253個体/大崎市伸萠地区のみ)から両地区における現状の生息環境維持の必要性ならびに冬期湛水に伴う農業水路への通水が水路等に取り残された魚類の生息を保証して、水田等の越冬場所に導く役割を果たしていることを明らかにした。さらに、DNA分析による交雑実態の分析のほか、生息場数、生息場の増減率を組み込んだ数理モデルを構築して、メタ個体群の絶滅リスク解析を行った。慣行水田、冬期湛水水田、通年湛水休耕田やビオトープ水田において、各トンボ種の生活環から有効な保全技術を検討した結果、種によって好む水深が異なることが明らかになり、統一的な水田管理でなくモザイク状に多様な管理の水田が存在することが、より多くのトンボ種を保全できることがわかった。特に、寒さと乾燥に弱い種の耐性を考慮すると、通年湛水のビオトープ水田が不可欠な保全技術である。生物の側面から見た生物多様性向上技術を担保する上で、生物の生息環境に関わる環境管理技術や合意形成手法の確立も重要である。非灌漑期における賦存水量の定量評価や冬期湛水圃場における水収支を事例的に考察した結果、初期湛水深を減じるか湛水期間を長期化することにより、現在の2〜3倍程度の面積を湛水することが可能であると算定された。また、農業者や住民参加による畦の草花や田んぼの生きもの調査の方法を検証することを通して、環境認識ツールや人と生物の関係を再構築することの重要性を指摘し、そのための情報共有プログラムを試作した。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (6件)
農村計画学会誌 27
ページ: 335-340
ページ: 257-262
棚田学会誌 9
ページ: 3-11
ページ: 125-132
ページ: 20-25
田んぼの生き物調査実践編 4
ページ: 300-301