研究概要 |
本研究は,地表面における太陽光(以後,単に太陽光)の分光エネルギー分布に近い光を基準光として照射可能であり,かつピーク波長の異なる発光ダイオード(以後,LED)への印加電圧(供給電流)の調節により,光生物学研究において重要な波長範囲について分光エネルギー分布を任意にかつ動的に制御できるようなシステムを開発することを目的としている。その目的達成のため,平成20年度の計画には,(1)照射光の光強度を快晴時の太陽光の1/2程度にまで高めるとともに,植物育成に最低限必要な照射面積を確保する,(2)LEDモジュール(32種類のピーク波長のLED群を基板に適切に配置したもの)の基板の積層プリント基板化を行う,(3)発熱による分光エネルギー分布の変動を抑制するために,LEDモジュールの基板背面からの能動的放熱のための装備を加える,(4)分光放射計により計測した光源照射光の分光エネルギー分布を,コンピュータ(エクセルシート)ヘオンライン入力と最適印加電圧の再計算を含めたオンラインのフィードバック制御用プログラムを作成する,という4項目を挙げた。(1)については,「植物育成に最低限必要な照射面積を確保する」の部分が達成できなかった。複数のLEDモジュールからそれぞれ高い効率で導光してより大きな照射面積を達成しようと試行錯誤を繰り返したが,有効な方法が見つからなかった。(2)および(3)については,順調に達成した。(4)は,(3)を達成した結果,作出光の分光放射照度の再現性が予想以上に高まったため,実施の必要性がなくなった。また,完成した光源システムを用いて,秋の屋外における日中の太陽光の平均的分光エネルギー分布の1/3強度の時間変化を再現した光環境下と,それとは逆の時系列の光環境下におけるイチゴ葉の純光合成速度測定等を,運転試験を兼ねて行った。照射面積に制限はあるものの,本光源システムは,従来作出不可能であった多様な光環境を高い再現性を担保しながら作出できることから,光生物学研究の新たな発展に貢献しうるシステムであることが実証された。
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