研究課題
農産物をはじめとする植物体内においては、細胞膜や液胞膜は水移動の抵抗として果たす役割が大きい。そこで、データの蓄積の意味も含め、特にしおれが生じやすい葉菜類について、水移動に関する物性値である細胞膜水透過係数(Lp)、NMRプロトン縦緩和時間(T1)を測定し、貯蔵温度、貯蔵時間および水分損失などとの関係から、葉菜類内の水の動きを検討すると共に、測定の自動化を図ることを目的とした。供試材料には18℃で28日間養液栽培したホウレンソウを用いた。収穫したホウレンソウから、質量が15g〜30gのものを選び、貯蔵容器内湿度が飽和する状態で96時間貯蔵した。実験区は、20℃一定区と、貯蔵開始24時間は2℃、その後20℃で貯蔵する温度変動区を設けた。T_1の測定は2株のホウレンソウの第3葉、第4葉の主脈を除いた中央部を飽和回復法により測定した。Lp測定はホウレンソウ第3・4葉中央部の裏面表皮を剥離して葉肉細胞のプロトプラストを調整し、周囲の溶液濃度を変え(0.6M→0.4M)て浸透圧変化を与え、体積変化を生じさせた。測定温度はいずれも20℃である。両区の目減りは、収穫後24時間においては蒸散量が低い2℃の方が低かったが、その後の目減りは両区ともほぼ同量であった。従って、貯蔵初期の24時間における目減りの差が貯蔵96時間まで維持されたと考えられる。96時間の貯蔵期間中、両区の長いT_1成分には差が認められず、貯蔵時間と共に増大するという類似の傾向を示した。また、短いT_1成分についても同様の傾向が認められた。一方、2℃一定で120時間貯蔵した既往の研究では、貯蔵期間中T_1に変化が認められなかったと報告されている。つまり、2℃に24時間さらす操作はホウレンソウ組織内の水の束縛状態に大きな影響を与えないことが示唆された。Lpについては、貯蔵開始48時間後に2℃におけるLpが有意に小さいという結果がみとめられたが、すべての実験中において、標準偏差が既往の二層流法によるLpのデータ(Oshita et al.2006)より大きかった。これを解決する一方法はデータ数を増やすことであるが、このために必要な、測定・解析手法の更なる改良とデータ処理の自動化を検討中である。
すべて 2006
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XVI CIGR World Congress, Agricultural Engineering for a Better World, Book of Abstracts
ページ: 607
農業環境工学関連学会2006年合同大会要旨集(CD) in CD
Proceedings of the 3^<rd> International Symposium on Machinery and Mechatronics for Agricultural and Biosystems Engineering in CD