研究概要 |
主要寒地型牧草16種を供試し,気候温暖化に伴う高温ストレスに対する耐性をクロロフィル蛍光法を用いたPSIIの高温阻害程度により評価した。その結果,種間には高温によるPSII阻害程度に大きな差が見られ,一般に成長の早いライグラスやベントグラスなどは高温耐性が低く,シープフェスクなどの成長の遅い種で高温耐性が高かった。また高温耐性と葉のSLAや含水率に高い相関が見られ,葉の構造的特性が,高温耐性に関係していることが示唆された。 同時に,主要寒地型イネ科牧草のペレニアルライグラスについて,高温処理によるヒートショックタンパク質(HSP)を中心とした遺伝子発現の変化とHSP生産量を,RT-PCRやウエスタンブロティングにより解析した。その結果,高温処理後のHSPのmRNAの発現は1時間後から見られ,1日後に最大の発現量を示した。また,クロロフィル蛍光により測定したPSIIの阻害度も1日目までは障害を受けたが,HSPが発現した2日目からは,PSIIの傷害は回復し,HSPが高温耐性に対する防御機構として機能していることが示唆された。
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