研究概要 |
【背景および目的】炎症性腸疾患(IBD)は,Quality of Life (QOL)を著しく低下させることから大きな社会問題に発展している.本研究は,イムノバイオティクスによる炎症性腸疾患の発症防御機構を,特異的受容体介在性のサイトカインネットワークの観点から総合的に解明し,新規"イムノバイオティック食品"の開発基盤を築くことを目的としている.本年度は,IBDの予防・改善に有効なイムノバイオティクスとその活性因子の評価系について,ヒトモデルとして有望なブタにおいて,受容体の中でもNodに注目し,その解析と応用を目的とした. 【方法】ブタNodファミリーのクローニングとその遺伝子導入細胞(トランスフェクタント)の構築 (1)ブタにおいてNod1,Nod2をクローニングし,腸管における発現を解析した.(2)IBDに有効なイムノバイオティクスのスクリーニング系細胞株を構築するため,Nod1,Nod2のトランスフェクタントをCHO K-1あるいはHEK293細胞株で構築を試みた.構築した細胞の免疫応答性を検討した. 【結果】(1)ブタNod1およびNod2の遺伝子配列を解析し,全構造遺伝子のクローンを得た.定量的RT-PCR法により,初生仔ブタおよび成熟ブタの各種組織において,それら遺伝子の発現を解析することができた.(2)ブタNod1およびNod2の遺伝子導入細胞系の構築に成功し,細胞内タンパク発現を確認した.発現細胞は,Nod1およびNod2のポジティブリガンドに対する免疫応答性を発揮することが確認された.試験したイムノバイオティクスのほとんどは,Nod2を介して免疫応答を亢進することがわかった.以上の成果は,Nodを介するイムノバイオティクスの選抜と,その免疫応答機構の解明につながるものと期待された.
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