研究概要 |
本研究は、食肉タンパク質の酵素分解物の抗酸化活性に注目するとともに、副産物の酵素分解物(ペプチド)に還元糖を添加して加熱させた際に得られるメイラード反応生成物の保健的機能や嗜好性向上効果についても検討を加えた。すでにこれまでの検討により、食肉タンパク質のパパイン分解物が強い抗酸化活性を有し、経口投与により抗疲労作用や抗ストレス作用を示すことを明らかにしたが、その作用機序の一端を解明した。食肉タンパク質分解物あるいは同定した抗酸化ペプチド(Asp-Leu-Tyr-Ala, Ser-Leu-Tyr-Ala, Val-Trp)の経口投与は、血液中のヒドロペルオキシド値(酸化ストレスマーカー)を低下させた。また、この種の抗酸化ペプチドが、欧州等で生産されている伝統的な発酵食肉製品(発酵ソーセージや生ハム)中にも存在することを示した。一方、コラーゲンやエラスチン等のタンパク質を多く含む皮等の畜産副産物は、アミノ酸組成に偏りがあるため、栄養学的な価値が低く有効な活用方法の開発が求められている。鶏皮タンパク質をプロテアーゼ処理して調製したペプチドの抗酸化活性は非常に低かったが、還元糖の添加後に加熱すると、抗酸化活性が非常に高いメイラード反応生成物が得られた。このメイラード反応生成物のマウスやラットへの経口投与は、抗ストレスや血圧降下といった保健的な作用を示すだけでなく、嗜好性にも優れていた。保健的機能や嗜好性に寄与する成分については、同定を進めている。得られた一連の研究成果は、食肉や畜産副産物に隠されている保健的機能を解明するとともに、食肉や畜産副産物を主原料とする新しい機能性食品の開発に寄与するものと確信している。
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