研究課題
ABO式血液型の不適合は移植における主要な危険因子の一つであるが、慢性的な臓器不足を背景にABO不適合腎移植が行われている。同移植における技術進歩は目覚ましく、移植腎の生着率は著しく向上したが、不適合抗原に対する抗体が産生される結果引き起こされる拒絶反応への懸念は依然存在する。危険性の高さから心臓や肝臓のABO不適合移植は一般的に行われていない。もしも移植前の患者に不適合血液型抗原に対する免疫寛容を誘導できるならば、ABO不適合移植の安全性はより一層高まると考えられる。本研究は、ABO不適合移植に応用可能な免疫寛容誘導法の確立を目指している。ABO抗原に構造が酷似する糖鎖抗原であるα-gal抗原をモデルとしたマウス実験において、目的とする抗原を発現させたリンパ球を投与する事によって抗原特異的な免疫寛容を誘導できる事を明らかにし、同様の方法によりマウスにおいてヒトB抗原に対する免疫寛容を誘導できる事を確認した。研究の次なる段階として大動物実験が必要であるが、ヒト以外の種では霊長類動物を含めABO抗原の発現が低いために、本研究に適する大動物実験動物モデルの構築が求められた。そこで、核移植の手法を用いる事により、ヒト同様ににABO抗原を発現する遺伝子改変ブタを作出し、それを用いてABO抗原に対する免疫寛容について研究する事を目的として実験を行ってきた。これまでに、ヒトA抗原の生成酵素遺伝子を導入した遺伝子改変クローンブタを作出し、そのブタの細胞の一部にA抗原が発現している事を確認した。しかしながら、本研究の目的に合致するブタ実験モデルを作出するためには更なる遺伝子導入が必要である事が明らかとなり、研究を続行している。また、免疫寛容に用いるリンパ球へのABO抗原の安定発現のために、ウイルスベクターあるいはそれ以外の方法を用いて検討を重ねている。
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Transplant Immunology 20
ページ: 132-138